「サツキ、柳のこと、教えてよ」
カンナの話を聞き終わるや否や、ユキは犬の姿で目を閉じているサツキに詰め寄る。
「当主……柳、様は、私が狂わせたのだ」
「どういう意味?」
「……一夜の過ちに狂った柳様は、私を……離さなくなった……」
「柳さんは、サツキの色気にアテられたの?」
「満月の夜、気の昂ぶった獣神の瞳は金色に輝く。見つめる人の魂を取り込む……らしい」
「ふーん。やってみてよ」
「柳様は、以前のあの方ではなくなってしまった」
「いいよ、サツキに吸い込まれるなら。本望だ」
ユキの言動に違和感を覚える。カンナが割って入る。
「サツキ、ユキは柳の生まれ変わりだ」
「……そんなことはない、どこも似てはいない」
「顔を良く見るのだ。ユキ、髪を上げろ」
「……柳……様、は、」
「ユキには未だ柳のような狂気は見られぬ。しかし」
「幸也殿は」
「僕の内に渦巻くこの情念が狂気だというのなら、僕はたしかに柳の生まれ変わりだろうね」
否定しようとするサツキを遮り、ユキは自らそう言った。
「サツキの所為じゃないよ、僕は君の瞳を見る前から君の虜だ。
 子供のときから、君が封印された箱を開けたくて仕方がなかった」

「サツキ、愛してる」

サツキの瞳が金色を帯びる。
唇が離れると、ユキはサツキを見つめてもう一度言う。
「愛してる」
カンナが化けた柳の姿を意識してか、普段顔にかかっている鬱陶しい前髪は耳に掛けられている。
「っ……」
サツキは目を閉じ顔をそらす。

「ユキ」

カマっぽいしうるさいけど、ユキはいい兄だ。
いつも俺の後ろに立っているのにいざとなったら前へ出て俺を庇ってくれる。
俺が傷つけば自分のことのように悲しんで話を聞いてくれる。
獣神とはいえ人と同じような感情をもつサツキは、深い悲しみを背負っているに違いない。
吸い込まれるなんてガラじゃない、こういう時傷ついたサツキを優しく包み込んでやるのがユキだ。

「ごめん……」

漆黒に戻った瞳がユキを見る。

「僕は、君を普通に愛するから」

ユキが前髪を下ろす。

「サツキ、明日デートしてくれないかな?」

「……分かった」

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