障子の外に満月が透ける。しんと静まり返った夜。
「サツキ、そなたの働きが認められた。明日、静川様のところが娘が嫁に行くので警護に当たって欲しいそうだ。
 部外者は行列に加われないらしく私はついていけないが、そなたは犬の姿になりついていける。
 妖の噂の多いところを通るので、是非内密にとのことだ。報酬もはずむ、行ってくれるか?」
「……はい」
多少の違和感を感じながらも、主の命令に逆らう理由はなく承諾した。
「そなたはまことに愛らしい」
主の指が私の頬を撫でる。
「柳さま、」
「できることなら私もついて行きたいよ。そなたと一夜でも離れるなど、寂しくて死んでしまいそうだ」
紅い唇が私の耳にかかる。吐息と舌に犯される。細い指先が腰をまさぐる。
「っぁ……」
白い指が私のものを撫でる。空気に触れて震えるそれに、我が主の自身が当たる。
「ん、ぁ、っ──はぁっ」
まとめて握られ、摺り合わされる。暖かい。視界が、真っ白になる──
「あっ……!」
私と柳さまの出したものが混ざる。また、身体が昂る。だめだ、明日は仕事がある。
「気持ちよかったか?」
「……、」
「そのような表情をするな、抑えられなくなる。続きは、仕事を終えてからだ」
「……っ、……はい」
呼吸を整えて返事をする。着物を整えて部屋を下がる。犬の姿で竹林へ消える。
「ぁ、はっ、っ……!」
初めての性感に、昂ぶったままのそれ。人の形に戻る。一人で扱くと、すぐに達してしまう。
「はっ、……は、…………」
私の瞳は今、禍々しい金色をしているに違いない。
「サツキ」
主の声が聞こえる。
「サツキ、やはり、部屋の中へ……」
犬の姿で主の前へ歩く。
「なりません」
「今宵だけだ」
いけないのに。私は、愚かだ。

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