攻女装/顔射/鞭


「サツキくーん!」
「…………幸也殿?」

やっぱり、ユキは変態だ。

事は今朝7時。
「ねぇねぇサツキ、僕たちこれからデートするんだよ、デート!」
「デート……」
「でもね、今の社会で男同士ってちょっと珍しがられちゃうんだ」
「……」
「僕はいいけどサツキは恥ずかしがり屋さんでしょ? だからちょっと作戦があるの」
「どのような?」
「な〜いしょ! とにかく、雰囲気を出すために別々に家を出て待ち合わせるから、10時に噴水の前ね!」
「噴水?」
「やっぱり分からないよね、僕が案内したいところだけど、時間がないんだ。カズに聞いて!」
「…………」

そして今、道の説明が面倒だった俺は寒空の中サツキを噴水前まで連れてきた。
「来てくれたんだサツキくぅ〜ん!」
薄茶の髪をアップにし、濃い青色の小洒落たワンピースを着たユキは、あろうことか化粧まで施していた。
ミュールは底の厚いものではなく、派手好きなユキの趣味でないように感じたが、身長を抑えるためなのだろう。
サツキもなかなかの長身なので並んで立つとそれほど不自然には見えない。
ただし、それは身長に限った話だ。
俺たちの服でサイズが合うものがまずあまりなく、サツキにはジーンズが似合わなかった。
結局俺が適当に着せた綿パンにパーカーのサツキはお世辞にも洒落ているとは言えない。
素材がいいのでそれなりに見えるが、俺が同じものを着たらあんな格好のユキとデートどころではないだろう。
首元のファーを揺らしてユキが近寄ってくる。
「もう! カズったら適当な格好させちゃって!」
何故だか声まで高くなっている。
「何やってんだよユキ……」
「見たら分かるでしょ? あたしは今日はユキちゃんなの!」
にこ、と微笑むユキはそこらの女よりよほど綺麗かもしれない。
「じゃ、サツキくん、まずはお洋服買いに行こうか!」
「幸也殿、くん付けは必要ない」
「もうっ! サツキくんったらい・ぢ・わ・る! ユキちゃんだって言ってるでしょ!」
「ゆ……ユキちゃん……」
「エヘッ! じゃあ、お邪魔虫のカズはお家でお留守番してるんだゾっ!」

「…………」

去ってゆく2人の後姿を見ながら、実兄にここまで腹が立ったのは果たして初めてだったろうかと思い返した。

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