「サーシャ、どうだジェイルは」
「お疲れのようでしたわ。お可哀想に」
「そうか。昨夜お前は妹のようなものだから抱くなんて考えられないと言っていたぞ」
「国王の名を出したら嫌そうな顔をしておられました」
「嫌よ嫌よも好きのうちと言うだろう」
「妹萌えというのもあります」
 落ち着いて話してはいるが、お互い敵意が感じられる。
 セーファスとサーシャは、二人ともジェイルに恋をしていた。
「まあ、俺の方が望みはあるようで良かった」
「ジェイル様はお堅いですから、女の私の方が有利です」
「お堅いだけで同性愛に偏見はあるまい」
「しかし国王様は妻を娶って世継ぎを生ませねばなりませんわ」
「そんなもの養子でも取れば良い。ジェイルなら可愛がってくれよう」
「そんなことで王家の血を絶やすなんて、古参の重臣達はどう思うでしょうね」
 そして鈍感すぎるジェイルに、二人とも苦戦を強いられていた。
「分かっているのかサーシャ、俺には権力があるぞ」
「権力だけではお心までは留められませんわ」
「この勝負、絶対に負けんからな!」
「私こそ!」
 勝負の内容は、どちらが先にジェイルと寝ることができるかという身も蓋も無いもの。

 しかしサーシャは焦っていた。
 長年ジェイルを想いつづけた。だからこそ分かる。
 想い人は、自分のことを愛してはいない。本人も気付いていないが、国王に惹かれている。
 しかし、このことには、国王も気付いていない。
 ジェイルが国王への想いを自覚する前に、自分を愛してほしい──。

「ジェイル、今夜は夜間警備は他の者にやらせろ」
 夕方、交替を控えて国王の私室の近くまで来たジェイルに、セーファスは言った。
「しかし……」
「お前は俺のベッドの中に居てもらう」
「……はい?」
「実はな、俺は暗殺者に狙われているらしいのだ。念には念を入れて、お前にはすぐそばで待機してもらいたいのだ」
「あ、あぁ……了解しました」
 なんとか返事をして、一瞬不埒な想像をした自分を恥じる。

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