「申し訳ございません!」
「これくらいで怒るなセーファス」
やや強い口調で言い放つジェイルにセーファスがたじろぐ。
「もういい、下がれ!」
「セーファス、執務は」
「全力で片付けた!」
エミリアが皿を持って出て行くと、セーファスはジェイルのいるゲージに歩み寄り鍵を掛け直す。
「トイレトレーニングというやつだ、そこで排泄を終えるまで鍵は開けん」
「俺はこの檻からぐらい脱出できるぞ」
「するのか?」
「…………」
「何、排泄するくらい、簡単なことではないか」
それならお前がやってみろ、と思いながら、気を紛らわせるため目を閉じ考え事にふける。

そもそも国王が何故これほどまでに自分に固執するのか分からない。
10歳近くも離れているし、彼は王族だ。
自分のような腕だけで成り上がった田舎剣士とは違う。

そして最近城に仕える女性たちから感じる視線が痛い。
突然女性たちにあからさまな敵意を向けられるようになった原因というと、国王との関係が噂されていることぐらいしか考えられない……。
セーファスは男の自分から見ても綺麗な顔立ちをしているし、王族で外面がいいから、女性に人気があるのだろう。

実際は以前から向けられていたジェイルを思い慕う視線、また国王との関係を応援する生暖かい視線も存在しているのだが、向けられているうちジェイルが感知できる感情は敵意のみだ。

自分は身を引くべきなのだろうが、国王のことは好きだ。前例がないこの感情は恋慕なのだろう。
国王に本当に愛する女性ができたら、そのときはただの護衛隊長に戻るつもりだ。
だが、それまでは……。

「ジェイル……まだか」
国王の声に目を開く。時計を見ると最後に排泄してから随分時間が過ぎている。
椅子にだらしなく座って自分を見るセーファスに、ジェイルは不機嫌な視線を向ける。
セーファスは椅子にきっちりと座りなおすと、そこから身を乗り出すようにしてジェイルを見つめる。
「……?」
ジェイルは腸が動くのを感じる。便意を催してきた。尿意もそれなりに感じている。
現時点ではどちらも我慢できる程度なのだが、このままでは檻の中で国王に見られながら排泄をせざるをえなくなる。
「下痢ではつまらんから、腸の働きを大いに助けるナチュラルな便秘薬を飲ませたのだが」
やはりあの「エサ」には何か入っていたか。
思うと同時に意識してしまうせいかジェイルの便意が高まる。
「どうだ? 出そうか? 我慢しなくてもいいのだぞ?」
「…………」
とりあえず、我慢できるうちに国王が飽きることを期待するが、ジェイルは少なくとも自分が排泄を終えるまでは飽きられないだろうとも思う。
しかし伊達にセクハラに耐えているジェイルではない。
「セーファス、お前は俺のことを愛してくれてはいないのか」
国王は少し性欲が旺盛なだけでジェイルを苛め抜いて心底喜べるような性癖は持っていない。
それが分かっているジェイルは勝負を仕掛けることにする。
「なっ……そんなはずがないだろう! 俺はお前を一目見たあの日からずっと一番に愛している!
 忘れもしない、12年前のあの夏の日……」
セーファスの唐突な回想、そして自分が思った以上に早く国王に見初められていた事実にジェイルはうろたえる。
自分の能力を隠すような振る舞いばかりをしている国王。
本来どの程度の才能を持っているのかは未だ計り知れないが、少なくともその印象以上には頭が切れるのである。
「あの頃はロン毛じゃなかったし前髪もあった。その上常に敬語で初々しかった。幼心に超カワイイと思った」
「ロン毛でオールバックな上タメ口をきくし老けてしまった今の俺は可愛くないな、さっさとこの遊びをやめないか」
セーファスが何を言ってくるのかは分からないが、自分の純真な彼への愛を利用されるであろうということには勘付き、早くも負けを悟ったジェイルはやけくそで呟く。
「何を言う、今は今で超カワイイぞ。ただ俺がまだ若かっただろう、やっぱり年が近い方が気になるのだ。
 15歳で国王の目に付く優秀な兵はお前しかいなかった」
「……お前は当時6歳だろう、俺にどんな感情を抱いていたんだ」
気になって聞いてしまった途端、ジェイルは後悔する。
「そうだな、当時俺はまだ精通もきていない。ここからは尿しか出ないものと思っていた。だが触ると気持ちいいことは分かっていた。
 だからお前を縛り上げてこれを触りまくっておしっこを漏らさせたかったな。それから顔に俺のおしっこをかけたかった。
 あとできることなら3日ぐらい便秘してうんちがなかなか出なくて便器にまたがっていきんでるところが見たかったな。すごく」
「……お前は変態だ」
「いや、俺は変態ではない。お前だから見たいのだ、ジェイル。
 お前が三十路手前まで童貞を貫くなんて、その時には分からなかったからな。
 何かよく知らないが大人の行為をするお前など俺以外の幾人もに見られるものと思っていた。
 その点排泄はどうだ、俺とお前とお前の親しか見ることができないではないか!
 ……そう思っていたが先日全くどうでもいい者達に見られてしまった訳だが」
「マセガキが」
「とにかく今、俺の幼少期からの夢が叶おうとしているのだ。6歳の少年の純粋な希望だ」
「…………」
「叶えてやろうとは思わないか、ジェイル?
 俺はお前のことが大好きだ、お前の全てを愛したい。応えてくれ、ジェイル」

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