「最初に考えたのは、守るべき人の存在。
 しかし君の周りを徹底的に調べても、家族は他界か行方知れず、恋人もいないようだし、あの場には仕える君主もいなかった。
 でも、ここで驚くべき事実が明らかになった。
 君はこの前の戦争で英雄になったけど、それまでお抱え魔道士の中でも下っ端の下っ端だったんだ
 これは何かある! 
 思って君を捕まえてみたら、すぐに分かったよ」


「君、ドジっ子なんだね」


認めがたいが、その通りなのだ。
普通に歩いていたら一時間に一度くらいは何もないところで転ぶ。
走ったらもっと酷い。五歩も進めば足がもつれて転ぶ。
身長が無駄に高いのもあり、頭をぶつけることも多い。
幼少の頃、もしや何かの呪いかと両親が魔道医師に診てもらったが、単なる運動能力の著しい不足と診断されたらしい。

「……やむを得なかったのだ。
 私が下手に動いて詠唱中に転び、城下町で暴発でもさせたら……」
「民を思っての行動だったのかい。
 だけど、まだ分からないことがあるんだ。
 君はいつもそう思ってコソコソと隠れていただろう?
 研究の方じゃちょこちょこ功績があったから、役立たずでもクビにはならなかったみたいだけれど。
 どうしてこの前は戦ったんだい?」

「エールスでの戦いの時、いつもの様に逃げ回っていたら、初めて敵に斬られたのだ。
 情けないことに出血多量で意識をなくして……。
 同僚に拾って貰えたのだが、み……見返りを求められて……
 今度はそいつがずっと私の後ろをついてきて、敵に囲まれたので致し方なく……」

「ほほう、見返りを払うのが嫌で今度はやられないよう戦ったと。で、その見返りって?」

テッドネスは金茶の鬱陶しい前髪をかき分け、にやにやしながら眼鏡を外す。

「だから……その……察しろ」
「うーん、なんだろう、分からないな」

暢気に眼鏡を磨くテッドネス。

「っ……!」

「ほらほら、早く言わないと」

首筋にチリチリと刺激がある。

「電圧上げちゃうぞ」

「だから……せ、性交だ……!」

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